S.ビリー アリヨ・ヌグロホ SJ

  2012年6月17日~23日にかけて、イエズス会神学生16人と2人の司祭がペサントレン(Pesantren)と呼ばれるイスラム教の全寮制学校に宿泊した。ペサントレンの名は、「テブイレング」(”Tebu Ireng”)という。その学校は東ジャワ州のジョンバン県におかれている。このプログラムは神学生の休暇の一部というだけでなく、イエズス会インドネシア管区の関心事のひとつとしても開催された。
  インドネシア管区の3つの優先課題は、貧困、環境破壊、そして宗教の急進主義(radicalism)である。それゆえこのプログラムは、私たちの優先課題に欠かせない要素となった。宗教の急進主義に関する関心は、イエズス会の公文書、とりわけ第35回総会の教令において確認されている。
  私たちはこのプログラムが、現在も宗教の急進主義に脅かされている我が国への意義深い貢献となることを望んでいる。私たちはまたこのプログラムが、養成中の若いイエズス会員に、諸宗教との対話の精神が根づく助けとなるように望んでいる。確かに私たちは、インドネシアがイスラム教徒が多数派の国であるという現実を否定することはできない。だからイスラム教徒との対話は避けては通れない。

  私たちはこの分野に深い関心を持つ二人のイエズス会神父に同行してもらった。その神父とは、イエズス会のHeru Prakosa神父と、Greg Soetomo神父だ。Heru神父は、JCAPでイスラム教徒とキリスト教徒の対話のための特別コーディネーターであり、Greg Soetomo神父は、イエズス会インドネシア管区の正義と平和委員会のコーディネーターである。

  このプログラムの間、私たちはペサントレンの、通常santriと呼ばれている学生たちと一緒に寝泊まりした。残念なことに、私たちがそこに滞在したとき、santriは休暇中だったので、少数の学生しかいなかった。それにもかかわらず、私たちは彼らと生活することは楽しかった。
彼らと共にした一つの興味深い活動は、哲学的で神学的な議論だった。私たちは双方の宗教で影響力のあった人物について議論した。カトリックの側からは、偉大な哲学者であり、神学者であるトマス・アクィナス(1225年-1274年)について、イスラム側からは、同じく偉大な哲学者であり、神学者であるアル・ガザーリー(1058年-1111年)について議論した。この議論を通して、私たちはお互いに自分たちの知識を豊かにすることができた。
  私たちの最も印象深い経験は、このペサントレンの校長である Salahuddin Wahid氏に出会ったことだ。彼は、ふつうはGus Sholahと呼ばれている。彼の父親はこのペサントレンの創立者だ。Gus Sholahはインスピレーションを与えてくれた。それらのひとつはこうだ。彼は言った、「私たちは同じ夢を持っている。それは我が国の繁栄と平和を創りだすということである」。彼はまた、この夢を実現するために協力してほしい、とも言った。なんて素敵な考え方だ!私たちは同じ夢によって結ばれている。この経験により、私たちは次のことを言うことができる。ジェンダーや人種や宗教に関わりなく、人間性(humanity)はすべての人々をひとつにする。本当に、これは私たちのやり遂げなければならない大きな務めだ。この務めは共に奮闘することによってのみ現実のものとなる。
  このプログラムの経験によって、私たちは楽観的になった。つまり、諸宗教間での寛容さも含む、繁栄した平和な国をつくるという希望は、まだ可能だ。なぜなら今や私たちは、ひとりだけでがんばっているわけではない、と信じることができるからだ。この経験から学ぶことができるひとつのことは、人間性はすべての人々をひとつにするということ、そして人間性はすべての人々に、その恩恵を広げていく刺激を与えるということである。